太田隆次の人事講座

「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵とダーティハリーとダイハード [目指せ!人事の雑学王]

投稿日時:2012/09/20(木) 09:00rss


 「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵は中村吉右衛門、ダーティハリーはクリントイースト・ウッド、ダイハードはブルース・ウイリスの、
それぞれが主演するテレビドラマで、共通するのは組織にあきたりない正義感あふれるスーパーマン警官で、
達成欲と自我が強くて組織になじめず、いわゆる出世には程遠いことです。娯楽番組とはいえ、
現代でも私達の身の回りにもいるこういう異能異才の活かし方を考えさせてくれます。

番組をみていない方のために付け加えると、鬼平といわれた長谷川平蔵は江戸時代の実在の人物です(1745~1795)。
400石の江戸幕府直属の旗本で、役職は火付盗賊改方の長で手に負えない凶悪犯相手の取り締まりで功績をあげ、
その生涯は瀧川政次郎など政治学者や歴史学者が興味を持ち研究して著書も刊行されています。

小説でも池波正太郎の「鬼平犯科帳」が有名で、それを原作としたテレビドラマや映画の主人公として人気があります。
中村吉右衛門の演じた長谷川平蔵は、実在の平蔵のイメージを最も忠実に演じたと評され、
テレビドラマ「鬼平犯科帳」は1989年から2001年まで延べ13年間ものロングランでした。
現在でも定期的に再放送されている人気番組です。

平蔵は若い頃、放蕩に溺れ裏社会の人物や実情をよく知っていました。父亡き後をついた役職で、
凶悪犯を探し出し治安の維持に大きな功績をあげ、民衆にも人気が高く、時の老中松平定信にも一目を置かれていました。

問題は方法にありました。直属上司や部下もいましたが、凶悪犯の居所を知るため、かつての放蕩時代の仲間と
親しくしたり情報を取ったり、その資金を作るため預かっている公金を無断で運用して増やしたり、
実績を上げるためには手段を選ばなくなりましたから、当然、上司は実績は認めても昇進はさせませんでした。

平蔵も、自分を昇進させない不満をあからさまに口にするようになり、潔癖感の強い松平定信も、
この江戸一番の人気者を「長谷川なにがし」と名前をフルネームで口にするのも控える程になりました。
業績は認められていましたが人物は評価されていませんでした。
それでも平蔵は、「越中殿(定信)の信頼だけが心の支え」と勤務に励んでいました。

江戸時代の文書にも「総体(総じて)、御役人は平蔵をば憎み候」とか、晩年の平蔵の言葉として「もう俺も力が抜け果てた。
しかし越中殿(定信)のお言葉が涙のこぼれるほど忝(かたじけな)いから、そればかりを力に勤める外には何の目当てもない。
是ではもう酒ばかりを呑み死ぬであらふ」とあります。

翻って現代の企業でも、研究開発技術者やセールス担当者や余人に替え難い特技を持っている社員には
「唯我独尊」「独断専行」のタイプがいます。確かに企業への貢献は認めるとしても、
企業競争は個人戦もありますが最後は団体戦で勝負するのですから、
異能異才社員といえども組織優位の順位は理解すべきです。
江戸時代の平蔵も「出世」と「トップの評価」の二点に弱かったのは、現代版平蔵も同じです。
組織内での異能異才の活かし方に参考になると思います。