太田隆次の人事講座

激動の時代の人事に必要なのは「三方睨み」 [人事の教養]

投稿日時:2013/07/18(木) 09:00rss


「三方睨み」という言葉があります。

例えば、歌舞伎役者が襲名披露で目を大きく見開き客席に向かって「一つ睨んでご覧に入れまする」と大見得を切り、
ぐるりと顔を動かし、下段の客、中段の客、上段の客と万遍なく睨むのを「三方睨み」というそうです。


 最近、次のような経済記事がありました。
「今週のドル円相場:三方睨みの神経戦継続か?今週のドル円相場は引き続き、アメリカの経済指標ウオッチと、
日銀の金融政策と、日銀の為替政策の三方を睨んだ神経戦の様相を呈することが予想される」


測量では遠い山の高さを測るのに「三角測量」の原理を使います。

古代エジプト時代に既に、ある地点から自分までの距離と自分を見上げた角度とピラミッドまでの距離の三つの数字を測り、
相似三角形の原理でピラミッドの高さを測りました。
この三点を「睨んだ」三角測量は、山の標高、星までの距離、航行中の船舶の位置などの測定に広く使われています。


人事の実務の世界でも「三方睨み」のスタンスが大切です。

例えば、

・自社の労働条件は(例 賃金、労働時間、福利厚生など)、自社の実績と方針と、いわゆる世間水準と、
 同業他社の水準の三つの数字を睨んで決められるのが一般的です。

・評価のランク付けは、「普通」を基準にして、「優秀」、「普通」、「劣る」の三段階評定(ABC)が、
 評価する側も評価される側も分かりやすく、古今東西を問わずどの組織でも構成員はこの「三方睨み」を基本にして
 評価されてきました。この変形として、奈良時代の役人の評価は「優秀」も「普通」も「劣る」を更に三段階に細分し
 合計九段階評定としていました。
 アメリカで「優秀」の上に「更に優秀」、「劣る」の下に「更に劣る」をつけた五段階評定(SABCD)が考案され、
 日本企業にも導入されています。しかし、基本は三段階の「三方睨み」です。

・人事制度の運営は、雇用、処遇、服務、人材開発、退職金、労使関係、福利厚生など
 すべてに「一般社員、監督層、管理層」に厳密に三区分して設計され、運営されています。
 最近はストレスに耐えかねて「ヒラになりたい課長」が増えてきましたが。

・しかし、何といっても激動の時代の人事に最も必要なことは、「過去」「現在」「将来」の三点を「三方睨み」で
 一度に見通す視野の広さと問題解決思考です。史上類を見ない急速な人口減少と高齢化の影響の深刻さ、
 強みであった物づくり競争力の弱体化などを挙げるまでもなく、日本の経営と人事の将来は決して明るくありません。
 「これまではこうだった」→「現在はこうである」→「これからはこうなる」という過去、現在、将来の三点を抑えた「三方睨み」が、
 今ほど求められた時代はありません。

メディアでよく報道されているように、労働力の急速な減少と高齢化、所得格差の拡大、
年金はじめ社会保障の先行き不安、グローバル競争力低下などの問題を、この「三方睨み」で睨んで、
現時点で将来に向けて何をすべきか問題解決思考で取り組みましょう。