太田隆次の人事講座

パラリンピックとエンパワーメント [人事の教養]

投稿日時:2014/03/25(火) 09:00rss


ソチのパラリンピックも終わりました。ルールと器具さえあれば障害者も健常者と同じようにスポーツを楽しめるというのがパラリンピックの精神です。

この精神を表わすのがエンパワーメントという言葉です。人事の世界でも広く使われています。エンパワーメントという言葉は適当な日本語訳がないので、教育や障害者支援  や看護や男女均等推進の現場でもこのままよく使われています。

カタカナで馴染みにくい言葉ですが、語源や使われ方の歴史的な変遷をたどるとよく理解できます。なお、この言葉は、広辞苑第6版(2008年)から日本語として収録されています。

1.17世紀
 元々の意味は、17世紀頃に法律用語として、em(与える)+power (力、権限) で、公的な権力や法律的な権限を与えるという意味で使われていました。例えば、I am empowered to do ~(私は~の権限を与えられている)のようにいいました。

2.現代
 しかし、現代ではこのような堅苦しい文例は少なくなりました。現代のエンパワーメントとは「社会的な弱者が本来備わっている力を取り戻し引き出せるように、組織の障害を取り除き、環境整備によって自立を支援すること」と定義されています。押しつけや援助や救済ではなく、あくまでも支援です。歴史を辿りましょう。
  1)女性参政権
  アメリカで1912年頃から女性に参政権を与えて女性の力を政治に発揮させよと、「女性にエンパワーメントを」というスローガンが出来たのが新聞にも報道され、有名になりました。
  2)障害者
  アメリカで障害者雇用促進法が出来た時、「障害者に補聴器や必要な保護具を与えたり、スロープなど施設を作れば健常者と同じ力を発揮できる」と「障害者にエンパワーメント」がスローガンでした。
パラリンピックの趣旨も全く同じです。
  3)男女均等
  「企業が男女均等と女性の力を本来発揮できるエンパワーメントを経営の中核と位置付けて自主的に取り組むこみ、企業活動の活力と成長の促進を目ざす」ことが、国連で、女性の「エンパワーメント原則」(Women’s Empowerment Principles,略称WEPs)として採択され、日本では、内閣府男女共同参画局が2012年3月19日に詳細を公表し、企業 の署名を募っています。
  4)看護理念
  看護は長い間、「医療者中心の看護」が基本理念でしたが、近年、「患者の権利や主体性を尊重して患者の持てる力が発揮できる看護」に、2000年頃から移りつつあります。「エンパワーメント医療」という言葉もあります。この方が回復が早くなるのです。
  5)介護福祉
  介護や福祉のケアも、個性無視の一方的な弱者救済から、環境整備などで、本来患者が備えている能力を自ら発揮できるエンパワ-メントによる自立支援へと移りつつあります。