太田隆次の人事講座

日本人の笑いは古代から [目指せ!人事の雑学王]

投稿日時:2014/07/23(水) 09:00rss


 福沢諭吉は明治時代に書いた「学問のすすめ」の中で、「西洋人は笑いながら話すが、
日本人は熊の胆を舐めているかのように無表情に話す」と嘆いています。
しかし、福沢諭吉は武士階級の出身なので武士同士はそうであったかも知れませんが、
江戸時代でも一般日本人は笑いが好きであったことは、落語や川柳や狂歌でも明らかです。

 もっと遡って古代日本人も笑いが大好きでした。
神話によると岩戸に隠れた天照大御神は外での賑やかな踊りと笑いに釣られてそっと顔を出しましたし、
平安時代の歴史物語(850~1025)には「物を言わずに我慢しているとお腹が膨れてくるわい。
土を掘ってそこへ埋めたいと昔の人は言ったぞ」と二人の老人が周りの人たちを笑わせる話があります。

 4500首を集めた万葉集は、上流階級の格調高い歌の他、巻16(3786番~3889番)は、ジョークや笑いばかりを集めてあります。その中から作った人の笑い声が聞こえるような数句を紹介します。

・白髪し 児らも生ひなば かくのごと 若けむ児らに、罵らぇかねめや(3793)
 若い娘さんたちよ、老いれば誰でも白髪が生えるのだから、その時はまたこんな風に若い娘さんたちに笑われるぞ

・家にある 櫃(ひつ)に鍵刺し 蔵(おさめ)めてし 恋の奴が つかみかかりて(3816)
 家にある、木箱に鍵を掛け、閉じ込めておいた、恋の奴が、出てきて私につかみかかる
 (天武天皇の第6皇子が宴会の後によく歌ったそうです)

・勝間田の 池は我知る 蓮(はちす)なし 然(しか)言ふ君が 鬚なきごとし(3835)
 勝間田の池は私も知っています。蓮(はす)なんかありません。そういうあなたにお髭がないのと同じです。
 (実はこの池は蓮が多いので有名で、天武天皇の第七皇子が勝間田池を訪れた時、
 蓮の花の見事さは格別と喜んだことへの、女性からの戯れの返歌です)

・石麻呂に 我(われ)物申す 夏痩せに良しといふものそ 鰻(むなぎ)捕り喫(め)せ(3853)
 石麻呂さんに 謹んで申し上げます。夏痩せに利くそうです。鰻を捕って食べて下さい。
 (公の文書で上部に奏上する時の「我物申す」を、大げさに友人あてに冗談で使っています)

・このころの 我が恋力 給(たま)わずは 京兆(みなとづかさ)に 出でて訴(うれ)へむ(3859)
 上司よ、近頃の私が恋のためにつぎ込んだ努力を評価して何も下さらなかったら、平城京の長官に直訴しますぞ

平成の私たちも、古代日本人に負けずに、ユーモアをまじえて表情たっぷりに話しましょう。