太田隆次の人事講座

ピッチャーの「球離れ」とプレゼンテーション [人事の教養]

投稿日時:2014/09/22(月) 09:00rss


1 アメリカのメジャーリーグで活躍した石井一久ピッチャーの解説です。

ピッチャーがバッターに向かってボールを投げる瞬間のことを、
野球の業界用語で「球離れ」(たまばなれ)といっています。もう少し詳しくいいますと、
  1. キャッチャーと情報のやりとり
    ゲームの状況、監督、コーチの指示、バッターの情報などを総合して、ボールをどこに、
    どういう球種のボールを投げるか、のサインをやり取りします。

     
  2.  ピッチャーがキャッチャーの指示通りボールを投げる
    ①どこに(ホームプレート上のバーチャルな垂直の四角形のどの位置に)
    どういう球種(ストレート、カーブ、スライダー、スプリットなど)
    どれぐらいの球速
    を決め、手に握ったボールを投げます。この瞬間が「球離れ」というもので、
    この「球離れ」の瞬間に試合の運命がかかっているのです。
2 ビジネスシーンでのプレゼンテーションも「球離れ」と同じです
 上司への報告、企画書や報告書の作成、会議での報告、顧客へのプレゼンテーションなどの直前は、
 ピッチャーの「球離れ」の直前と同じです。
 プレゼンテーションの「球離れ」の例を、数字を手がかりに簡単に紹介しますので参考にしてみて下さい。 

 「ゼロ」は、「現状否定」からスタートしてストーリーを展開します
  現状否定から始めると誰でも興味を持ち、全く新奇の結論を得るのに向いています。
  ・「ゼロベース予算」はカーター元米国大統領が、前例にとらわれず原点に戻って予算を編成したことから、
   「ゼロベース」は日常用語になりました。
  ・「この制度は前例や慣行にとらわれず全く新しいゼロベースで構築しました」がよく見かける例です。
  
 「1」は、一本で最後までストーリーを展開します
  大河は本流と支流のように枝分かれしても、主役は最後まで一本の大河であるように、
  水源地から河口までのプロセスと結論を示すのに向いています。
   ・フローチャート:作業の幹の部分をメインとし枝の部分の進行をプロジェクトや工程管理の日程表を時系列に示します。
   ・特性要因図  :「魚の骨チャート」ともいわれ、幾つかの原因(支流)が最終的に一つの結果(大河の河口)になるまで
             の因果関係を図示するのに向いています。
  
 「2」は、二者を比較対照しながらストーリーを展開します
  電気のプラスとマイナスのように、
  二つの特質は相対するが両方が合わさってこそ全体が成り立つというストーリーに向いています。
   ・感性と理性:カントは人間が持つ、相反する感性と理性を合わせ持つのが人間の本質であることを説きました。
           性善説と性悪説、微分と積分、年功序列給と職務給など相反する特性で全体が理解できる例が多くあります。
 
 「3」は、キーポイントの三点をおさえてストーリ-を展開します
  論点の位置を、三点をつないで視覚的に示したい場合に向いています。   
  ・三段論法:アリストテレスが考えました。大前提(すべての人間は死ぬ)、小前提(ソクラテスは人間である)、
          結論(ゆえにソクラテスは死ぬ)の順に結論を導き出す三段論法です。
  ・正反合 :物事は一挙には決まらない、時計の振り子のように両端を行き来しているが最後は
         その中間あたりで止まるようなものだ、ということです。
  ・経営資源:「経営資源は3M」(Man, Material, Money)を足掛かりに「経営はかくあるべし」のストーリーを展開します。

 「4」は、思考の流れに沿ってストーリーを展開します
  歌詞や講演のように、出だしから結論までを人の発想に従って線でつなぐストーリー展開に向いています。
  ・問題解決法:1970年のアポロ13号が事故を起しましたが、
   ①問題の特定、
   ②原因の把握、
   ③対策の選択肢の評価、
   ④実行
   という4段階の手順により奇跡的に生還したことから、この順序による問題解決法が商品化されました。
  ・起承転結:もともとは四行から成る漢詩の構成順序ですが、歌詞、4コマ漫画、講演などに、広く使われています。
  ・PDCA :品質管理の創始者デミング博士が唱えた、Plan-Do-Check-Actionは「デミングサイクル」として
        PDCAと略称され、今では知らない人はいません。
  ・マトリックス:違う特性の高低を縦軸横軸にプロットして4区分を作る方法でよく使われています。
 
  「5」は、抜け落ちのないようにカバーするストーリ-を展開します
  情報伝達に抜け落ちのないように5つのWで面をカバーして具体的実行(1H)に至るまでのストーリー展開に向いています。
      5W1H :「ジャングル・ブック」で有名なイギリスの詩人Kipling(1865~1936)の詩の
         「私は6人の正直な召使を持っている。名前はWhat, Why, When, How, Where そしてWhoである」に由来し、
         日本では戦後間もなく、アメリカ軍が「CCS」という日本経営者講座で5W1Hとして紹介したのが始まりです。