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コンテンツ提供元:株式会社ブレインコンサルティングオフィス 

2012/02/24

認定基準を否定する司法判断 石綿労災


 アスベスト(石綿)を吸って肺がんを発症したが、労災不認定とされた埼玉県の男性が、国を相手に処分取り消しを求めた訴訟の判決が23日、東京地裁でありました。裁判長は厚生労働省の認定基準に関する通達について「合理性に疑問があり、救済範囲を狭めるもの」として処分を取り消しました。厚労省の石綿労災の認定基準についての通達を否定した司法判断は初めてになります。

 判決によると、男性は73年から千葉県君津市の新日本製鉄の技術者として11年5カ月間、石綿取り扱い業務に従事し、03年に肺がんになり、労災請求しました。

 専門家が検討した厚労省の06年認定基準では石綿作業に10年以上従事するなどの条件があれば、認めるようにしましたた。ところが、厚労省は事務処理規定などとして新たに07年に認定基準の通達を作り、10年以上従事しても、乾燥した肺1グラムに石綿小体が5000本以上あるなどの条件を満たさなければ、原則的に不認定としました。男性のこの石綿小体は1000本台だったため、木更津労働基準監督署は07年、労災を不認定としました。

 古久保裁判長は「石綿小体の本数規定は本来は、従事歴10年未満の人を認定するための救済規定で、既に従事10年以上の労働者に要求するのは、救済規定の趣旨に反する」と断じました。