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コンテンツ提供元:株式会社ブレインコンサルティングオフィス 

2012/04/11

大手企業の健保組合が保険料率上げ


 大企業の会社員が加入する健康保険組合が相次いで保険料率引き上げに動いています。JRグループやコマツなど2012年度中に実施する企業は約1400ある組合の4割程度に達する見込みです。団塊世代が65歳以上にさしかかり、高齢者医療制度に拠出する支援金の負担が膨らんでいます。健保全体の平均保険料率は11年度の7.9%から8%台前半と02年度(8.5%)以来の水準に上昇する見通しで、企業収益や家計を圧迫する要因となります。

 健保組合全体では今年度、保険料収入から支出を差し引いた経常収支が5年連続で赤字となり、赤字額も前年度並みの6千億円規模となる見込みです。各健保は経常赤字になると積立金を取り崩し、それでも賄えないときは保険料率上げで対応します。11年度は全体の約4割(予算ベース)の健保が引き上げに動いています。

 三井化学の健保組合は今年度、保険料率を0.7ポイント引き上げ、従業員の標準報酬月額の7.5%としています。JFEホールディングスの健保は0.4ポイント引き上げ、東日本旅客鉄道(JR東日本)などが加盟する「ジェイアールグループ健康保険組合」は9年ぶりの料率引き上げを決めました。

 例えば年収400万円の被保険者の場合では保険料率が8%から9%に上がると年間の負担は2万円増の18万円程度になります。企業側も従業員1人当たり原則として同額の負担が増える計算です。三井化学では企業と社員らの負担は、それぞれ4億円程度増える見込みです。

 健保が保険料引き上げに動くのは「高齢者医療制度の負担が増え、積立金では賄いきれなくなった」(ジェイアールグループ健保組合)ためです。08年度からの後期高齢者医療制度では法律上、75歳以上の医療給付費の約4割を現役世代が負担する仕組みです。さらに団塊世代が65~74歳の前期高齢者にさしかかり、この医療費も増えています。

 少子高齢化が進み、これら高齢者医療向けの支援金が健保の保険料収入の4割超に膨らみ、健保財政を圧迫しています。特に大企業は、加入者の平均年収に応じて各健保の負担に傾斜をつける「総報酬割」が一部導入された影響で中小企業などに比べて、負担が重くなっている面もあります。

 多くの健保が保険料率を引き上げていますが、それでも赤字を埋めきれず財政が悪化しています。各健保ではコスト削減策を急いでおり、コマツの健保は11年度にかけて人間ドックや歯科検診の補助などを休止。三菱自動車は2年ほど前、関連会社の健保を切り離すなどの健全化策を実施しました。

 体力のある大企業は料率引き上げも含めた対応策でやり繰りしているが、中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)は今年度に全国平均の保険料率が10%台に乗せるなど、財政悪化も一段と厳しくなっています。