コンテンツ提供元:株式会社ブレインコンサルティングオフィス
2018/04/13
正規の待遇を下げて非正規との格差是正 有名企業が住居手当を廃止へ
「日本郵政グループが、転居を伴う転勤のない正社員に支給している住居手当を、今年10月に廃止することがわかった。」といった報道がありました。
廃止のきっかけは、日本郵政グループ労働組合の今春闘での要求。
同グループの社員の半分程度は非正規社員で、その待遇改善を図る同一労働同一賃金の時流に乗って、正社員だけに支給している手当を非正規社員にも支給するよう求めたとのことです。
これに対し、企業側は、労働組合側の考え方に理解を示し、正社員だけに支給している手当を見直すこととしたのですが・・・
その内容が、年始手当を除き、正社員の待遇を下げるものだとのことです!
●今春闘で決まった内容の例
・住居手当→転居を伴う転勤のない正社員への支給を廃止
(非正規社員への支給なし)
・寒冷地手当→支給額を削減(非正規社員への支給なし)
・年末年始手当→年始手当を非正規社員にも支給。年末手当は廃止
〈補足〉正社員に不利益を生じさせるものについては、一定の経過措置を設けるそうです。
政府が掲げる「同一労働同一賃金」は、非正規の労働者の待遇を、正規の労働者並みの待遇に引き上げることを想定したものです。非正規の賃金を増やして経済成長につなげることが最大の狙いといえるでしょう。
しかし、誰もが知る企業グループが、その狙いと逆行するように、正規の待遇を下げて非正規との格差是正を図るといった対応をとったことは、大きな波紋を呼びそうです。
今後、訴訟などに発展することがあるのか?政府から見解が示されることがあるのか?など、動向に注目です。
〔参考〕今回の件、正規の労働者からすると、労働条件の不利益変更ということになります。
不利益変更が認められるのは、基本的には、労使の合意がある場合です。
しかし、合意がない場合でも、変更内容の周知が行き届き、かつ、変更が諸事情に照らして合理的である場合には、不利益変更が認められることになっています。
今回の件のように、「非正規との格差是正」を理由とする場合、そこに合理性が認められるのでしょうか? 仮に訴訟になれば、そのようなことがポイントになりそうです。
このようなルールは、労働契約法に規定されています。詳しくは、こちらをご覧ください(第8条~第10条の部分を参照)。
<パンフレット「労働契約法のあらまし」/労働契約の成立及び変更>
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13_0003.pdf
« 財務省が年金支給68歳開始案(財政制度分科会) | 「Society5.0の地方における社会実装/国際展開」について議論(第15回未来投資会議) »
記事一覧
- 派遣労働者に係る労使協定方式 独自統計を使用する場合の「独自統計調査の活用について(報告)」の記載例を公開(厚労省) [2024/11/28]
- 鉄道分野において「特定技能1号」の在留資格が初めて許可されました(国交省) [2024/11/28]
- 令和6年春闘 年末一時金(第2回)回答集計を公表(連合) [2024/11/28]
- 女性活躍推進及びハラスメント対策について論点を整理(労政審の雇用環境・均等分科会) [2024/11/27]
- 求人者の皆さまや医療・介護・保育・幼児教育施設などで人材を募集している皆様へ向けたリーフレットを公表(厚労省) [2024/11/27]