• トップ
  • トピックス
  • タクシー運転手の残業代をめぐる国際自動車事件 原告側が和解成立を発表

人事・労務に関するトピックス情報

コンテンツ提供元:株式会社ブレインコンサルティングオフィス 

2021/03/11

タクシー運転手の残業代をめぐる国際自動車事件 原告側が和解成立を発表


「東京都のタクシー会社に勤務する運転手が、歩合給から残業代相当額を引く仕組みを定めた賃金規則により実質的に残業代が支払われていないとして、未払い賃金の支払いを求めていた訴訟について、令和3年3月10日、原告側の運転手らが会見を開き、和解成立を発表した」といった報道がありました。
 
会見によると、原告の運転手198人の未払い分の残業代などとして、会社が総額約4億円の和解金を支払うことで合意したということです。
 
この国際自動車事件は、数次の訴訟で係争されるという複雑な経過をたどりましたが、昨年(令和2年)3月30日の最高裁判所の判断は、次のようなものでした。
そのうえで、残業代の金額を審理するため、高等裁判所に差し戻していました。
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払につき、時間外労働等に伴い発生する残業手当等の額がそのまま歩合給の減額につながり、歩合給が0円となることもあるなど判示の事情の下では、これにより労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたとはいえない。
 
以前から、「労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される」とされています。
 
また、「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である」とされています。
 
結局は、これらの趣旨や考え方に沿って判断された結果、「労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたとはいえない」という結論に至ったものでした。
 
 固定残業代などを設けている場合は、注意が必要ですね。
 
〔参考〕令和2年3月30日最高裁判所第一小法廷判決〔いわゆる国際自動車(第二次上告審)事件〕(最高裁判所ホームページ)
 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89433